違和感

2018/11/12

 電車の中で見かけた、日能研のこの問題を見てほしい

 なぜ原爆を「絶対悪」と言うのか・・・東京大空襲など当時行われていた他の攻撃と比べて、大きく違う点を説明せよという問題である。

 解答例にはこうある。

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原爆や核兵器は投下されたところにだけ被害を与えるのではなく、放射線によって広い範囲に被害を与えるため。また、放射線による後遺症など、将来の世代にわたって被害を与えるから。
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 という事はだ・・・。
 放射線によって広い範囲に被害を与えたりせず、多世代にわたる被害を出さない「瞬殺する大量殺戮兵器」は絶対悪ではない。という風にも言えてしまうのではないだろうか。

 もちろん、核兵器というものは人間が人間に対して使って良い種類の兵器ではないというのは、現代において当たり前の認識であるが、アメリカ、ロシアをはじめとした核保有国はこう思っている。「自国民を守る道がそれしかないなら使用もやむを得ない」。

 問題解説を見る限り、核とは何かという本質を問う問題と書かれているが、それにしては誰かが決めた当たり前の常識的倫理観の枠におさめていこうとする、陳腐な問題であると思う。

 もっと長文で答えさせる形式で、広島市長が原爆や核兵器を「絶対悪」と言ったが、これについてあなたは絶対悪であると思うか、思わないか、その理由と共に記せとかじゃないと、本質は問えない。

 この模範解答はとても陳腐だ。

 絶対悪という、もっとも是非を問うべき部分を固定してスタートして、決まった答えに導こうとしている。
 大人が望む、倫理観と常識のある優しい子供象を演じられる者が正解する。

 真に哲学的、客観的、科学的アプローチで、本質に迫ろうとする探求者は正解できない。

 

 多世代にわたる被害が絶対悪ならば、ローマ人はカルタゴを滅ぼし、二度と歯向かえないよう田畑に塩水を撒いて、塩害で作物が育たないようにした。

 まさに、将来の世代にわたっての被害である。

 クメールルージュは、知識人、大人、まともな人間を根こそぎ殺して、教育を子供から奪い、国家の将来の世代にまでわたる呪いのような惨禍を残した。

 これらとの違いはどこなのだ。
 模範解答ではbecauseの部分が陳腐すぎる。放射線による後遺症、将来の世代にわたっての被害。
 放射線による後遺症は許されないが、焼夷弾によって重篤なやけど等で生活に支障をきたすなどの後遺症を与える事は絶対悪ではなくて、原爆は絶対悪。これはどうにも、難しい。少なくとも私はスムーズに合点できない。

 もちろん、核兵器は望ましい存在ではない。だが、そのことの理由はもっと根源的で、深淵な人間の技術と倫理と自制のありかたの問題であって決して、将来への被害が理由ではないはずだ。

 放射線障害をおこさず、なおかつ広島よりもはるかに高威力の核兵器が生まれたとして、それは絶対悪なのか?
 この理論では、その兵器は絶対悪にならない。

 広島型をはるかに上回る、広範囲を灰燼に帰すような通常兵器があったとして、それは絶対悪にはならない。

 原爆投下の時点で、核兵器を明確に規制する国際条約も無かったわけで、無辜の民をも犠牲にする攻撃であったという点は避難できるにしても、であれば東京大空襲と何が違うのか。

 被害の規模か?

 では、どの規模からなら絶対悪なのだ。
 広島の9割の被害なら?8割の被害なら?7割の被害なら?どこに閾値を設けるのか。

 

 東京大空襲と、何が大きく違うのか・・・。
 まったく違うともいえるし、単なる規模と威力の違いとも言える。

 

 この問題は難しい。

 そもそも、広島市長が絶対悪と言ったのは、原爆投下・核兵器というものを、絶対悪として定義づけようとしたのではなくて、核攻撃という事が行われた事実を絶対に許さないという怒りの表明だったのではないだろうか。

 さらに、良く考えてみると「原爆を絶対悪とし、72年前の広島に落ちた原爆の被害の悲惨さに、目や耳をかたむけてほしい」という言葉を取ると、この言葉は「まずは原爆を許さないという立場に立って、私たちの惨状を知ってみてください」と言っているようにもとれる。

 定義づけではない。

 そう仮定して、物事を考えてみてください。という呼びかけであると読解すると、すんなりと理解できる。
 実にその通りだ。

 絶対悪として、広島の惨状を見た上で、アメリカ側事情やら、科学技術との接し方など、色々考えてみてね?というようにも思えるのだ。

 出題が、思考停止しているようで、少々気になる問題なので紹介してみた次第である。
 納得のいく模範解答を知りたい・・・。

 

 天の神様

 絶対悪という事は簡単です。悪ではないとは思いません。しかしながら、絶対悪と定義して、思考を停止させてしまう問いは、人の成長を阻みます。

 より納得できる回答に出会えることを、父と子と聖霊の御名においてお祈り申し上げます。

 えいめん!

コメント

  1. より:

    本当に絶対悪でしかないならば世界に存在を許されないのですが、残念ながら立場によってそうではないのが核ですね。
    被害者という目線で見るならば確かに絶対悪でしょう。
    しかし、保持者、保持国という一面で見ると意味が違います。
    それは果たして絶対悪と呼べるものなのだろうか?と思ってしまいますね。

    あくまでも核を絶対悪とするのは日本国、広島の落とされた立場というものにおいて。
    保持することも表向きはないでしょう。
    ただ、それも永遠かは分かりません。生きているうちになるかはわかりませんが…。
    仮に保持する立場になるまで時間が過ぎた時には、この核は絶対悪という定義の仕方も変わるのでしょうか。

    • reihou19 より:

      絶対悪なんていうポジションの存在が疑わしいのが、この問題の難しいところであるな。
      核兵器については、良い事ではないのだが、絶対悪という定義、これが何台である。

      定義がちょっと変だと、理論も変になるという好例であるな。

  2. Wie より:

    他の攻撃と比べる必要がないと感じます。

    せめて問題文が「広島市長は原爆・核兵器を何故絶対悪と言ったのか、その理由について考え述べよ」であれば良かったと思うのです。

    広島市長は「二度と繰り返し使用してはならない・使用させてはいけない」と言う意味で絶対悪と言ったのであり、
    他の攻撃が絶対悪でない、と言う意味合いは含んでいなかったと私は思います。

    しかし、問題文に他の攻撃と比べる文言が追加された事により、レイホウさんの仰るような見方も出来てしまったのだと。

    「広島市長は原爆・核兵器を何故二度と使用してはいけない・させてはいけないと言ったのか、その理由について考え述べよ」

    「原爆・核兵器が、東京大空襲など当時行われていた他の攻撃と比べて、大きく違う点を説明せよ」

    こういう出題の仕方で良かったかもしれません。
    出題の意図は核兵器について考えさせる事が目的で、色々な攻撃方法に対する絶対悪の是非を問う事ではないと思いますから。

    と言う感じで模範解答じゃなく、模範問題を考えてみた次第であります。

    • reihou19 より:

      その問題であれば、実に納得のいく回答であるな。
      本当に、出題時に恐らく、「原爆肯定の余地のある言い回しにならないか」という点にナーバスになりすぎて、絶対悪をスタート地点にしたせいで、こんんあ問題になってしまったのかもしれないな。

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